期末に利益が出た!どうしよう!
知り合いが、
「税金払うくらいなら、生命保険に加入するといいよ!」
というのですが、どう思いますか?
・・・という流れで、
私に相談をして頂くケースが結構あります。
いわゆる「節税保険」というやつです。
でも、
私のところに相談に来た場合、
ほとんどの場合(99%くらい?)は、
「止めておいたほうがいいですよ」
という回答を差し上げています。
節税保険加入をおすすめしない理由には、
会社のおかれた状況や、節税保険のスキームにより
様々な要因があるのですが、
いくつか、典型的な例を挙げようと思います。
節税保険をおすすめしない理由とは?
節税保険をおすすめしない理由は、様々あります。
- 資金繰りが悪くなる
節税保険に入ると資金繰りが悪くなるので、
元々、資金繰りが厳しい場合には、節税保険はおすすめできません。というのは、
100万円の税金を安くするためには、
200万円~500万円程度の保険料を支払わないといけないため、
結果的に、手元のお金は(一時的に)減ってしまうのです。資金繰りが悪くなるのは、お金を使う節税全てに共通する欠点です。
ですから、節税保険は、
(仮に活用するメリットがあるのだとしても)
資金繰りに余裕がある会社でないと、有効活用できません。
ちなみに、
私が思う、資金繰りに余裕がある会社というのは、- (社長も会社も)実質無借金で
- 余裕資金が数千万円程度はある
(=数年間~数十年間程度、外部に預けて使えなくなっても平気)
という程度の会社をイメージしています。
これくらい余裕があって、
初めて、節税保険に加入するかどうか検討をしてもいいかな、、
というイメージです。
逆に、
社長個人の住宅ローンがあったり、
会社で融資を受けていたりするのならば、
借金を返済するほうが優先。同様に、余裕資金がないのならば、
手元に資金を置いておくのが優先。
どちらのケースでも、
節税保険に加入するのは時期尚早だと思います。- 中長期的に利益が出ないとメリットが出ない
節税保険は、
「毎期の利益を、保険料の支払いで打ち消して、税金を減らす」
「そして、後で、支払保険料相当額を返してもらう」
という仕組みの商品です。ですから、
節税保険に加入する場合、
会社に利益が出ていなければメリットはありません。それも、
節税保険に加入した期だけではなく、
保険料を支払い続ける間は、継続的に利益が出ていないといけません。つまり、
保険金を受け取るタイミングまで、
恒常的に利益を出し続けないと意味がないわけです。ですから、
「今期、利益が出たから節税保険!」
という短絡的な発想は、かなり筋が悪いと思うわけです。
でも、
現在のような、先の読めない状況の中で、
向こう数年~数十年先の利益が読めますか?もちろん、突発的に赤字になってもいいのですが、
中長期的に、利益を出し続けられますか?そんな長期間、利益を出し続ける自信がない、
とおっしゃる方には、節税保険はおすすめしません。ちなみに、私自身は、利益を出し続ける自信はありません。
なので、節税保険に入る気はありません。- そもそもメリットがあるの?(笑)
上で書いたような、問題は全てクリアーしたぞ!
さあ、節税保険に加入するぞ!と思ったとしても。
そもそもの話として、
私が見かける節税保険の多くは、
加入するメリットがあるのか疑問な商品なのです。例えば、
税理士が代理店になっている事が多い某生命保険会社の節税保険で、
全額損金、5年~10年後の単純返戻率が、最高で75%程度、、
という商品がありました。現状の税率が約25%ということを考えると、
- 素直に税金を払えば手元に残るのは75%程度
- 節税保険に入ると、解約時に戻ってくるのが75%。
さらに、戻ってきたお金に税金がかかる。
というような状況になるわけで、
節税目的で保険に入るメリットがほとんどないわけです。- 単純返戻率が100%を越えればいいの?
-
上で書いたような節税保険は論外として、
外資系保険会社の節税に特化した(?)節税保険を選べば、
単純返戻率が約100%を越えるような節税保険もあるようです。ただ、このような商品であっても、
下記のような様々な問題があります。- 返戻率が高い期間に合わせてうまく損を出すのが大変
- 返戻率のピークを迎える期間が先過ぎて、
余剰資金を国債で運用した場合と比べて、利回りが良くない。 - (これが一番根本なのですが)
恒常的に利益を出せる会社ならば、
節税保険を使っても・使わなくても
長期的な納税額合計は変わらないことが多い。
結局のところ、
仮に返戻率が100%前後を越えたとしても、
節税保険のメリットを引き出すのは、
かなり困難だろうと思います。 - 租税回避スキームとして否認されるおそれも
節税保険の中には、
否認リスクが高そうに見える保険もあります。それは「逓増定期の名義変更」スキームです。
確かに、取引のパーツパーツを見れば、確かに合法っぽいのですが、
全体として見ると、「取引を行う経済合理性」がないのです。こういうものは、金額が小さければ
(税務署も、否認するのが面倒なので)見逃してくれるかもしれませんが、
金額が大きくなれば、否認されても不思議ではありません。保険屋さんは、責任を取ってくれませんので、
あくまで、自分で責任を取る覚悟を決めてください。
という感じで、
節税保険をおすすめできない要因は山ほどあるわけですが、
特に、
事業基盤が安定していない起業直後の会社の場合、
加入は止めておいたほうがいいと思います。
上で書いたことのくり返しですが、
資金繰りも安定せず、利益も安定していない状況では、
当座の資金繰りに支障をきたす可能性が高いからです。
私、個人の意見としては、
節税保険の加入などの、マニアックな節税テクニックに走るよりも、
どんな状況にも対応できるように
多少税金を払ってでも、
現金を貯めておくのが一番なのではないかと思います。
究極的には、
手元に、現金が潤沢にあれば、大抵のことは丸く収まります(笑)。
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